隅田川沿い”助六夢通り”に面した公園隣地の路地に位置する。以前、人通りもまばらな場所であった。「いかに人の流れを新たに作るか」ということが課題のひとつであった。この建物は靴問屋であった。東には桜の名所である隅田公園があり、気持ちの良い散策路がのび、隅田川の向こう岸にはスカイツリーも見える。まず、隅田公園と散策路を広いテラスのようなスペースとして捉え、庭として考えることで、ふとした時の視線のやり場を作った。お店のライブ感が外からも楽しめるよう、全面ガラスにし、吹き抜けの造作シャンデリアを介し、２階席へとダイナミックに繋げた。全体の配色は、モルタル下地のグレーにチーク古材の赤茶を合わせ、アクセントとして隅田川をイメージしたブルーを組み合わせた。全て新たなものに造り変えるのではなく、その空間が元々持っている空気感を大事にしている。なぜなら、人々が商いをしたり、暮らしたりしてきた空間には、時間の経過と共に培われた個性のある空気感が存在するからだ。その個性を昇華させ活かすことで、人はその空間になんとも言えない深みを感じることができる。最終的な構想は、助六夢通りを歩行者専用道路とし、セーヌ川のような水辺空間と公園と一体化させた”場”を創ることである。そうすることでより一層注目される、人が訪れたい”場”として、このエリアが盛り上がっていくであろう。