浅草シルクプリン工場の移転に伴うキッチンフォトスタジオのプロジェクト。

取り壊される旧工場のビルの表面にあったタイルを剥がしキッチンスタジオの壁に活かしたり、外で風化した亜鉛鉄板を集めて壁に貼り白塗装やホワイトモルタルなどを何度も重ね塗りしたりしながら丹念に仕上げていった。

旧く見せたかったわけではない。旧工場で積み重ねた時間がシルクプリンをここまで発展させてきたという事実を、新しい工場へ移っても感じられるよう、慣れ親しんだものの痕跡を新しい姿で残したかったのだ。

このようにして生成した壁はまた、別の長所も持つ。

施主であり、フォトグラファーでもある小野さんに次のような言葉をいただいた。

「この壁一枚で、何千種類もの背景が撮れます。カメラマンなら誰もがその価値が分かると思います。」