スケールの小さな都市景観と下町の雰囲気が横溢している商店街の一角にある、古い木造の長屋を改装した日本酒バルの新装計画。
おそよ40年を経ている既存建物に対して、1階に厨房、カウンター、8席のテーブル席、トイレを、2階には20席のテーブル席、パントリー、トイレを新設する。
内装は、最小限の素材と色とし、料理・お酒やサービスそしてそれらを楽しむ人々の背景として相応しい仕上げ材を選定した。また、表しにした古い木材の梁・天井と、新しい仕上げの対比を緩和することを意図し、床面に1階はモルタル、2階はアフリカンチークのフローリングを用いた。
外装のプロポーションや素材は、周辺の建物の外壁をリサーチし、下町の雰囲気に馴染ませながらも、店舗として認識できるように考慮し決定した。
新設した1階のモルタルの外壁と既存の2階の外壁との間に、新旧の外壁の緩衝帯として、ガラスのスリットを設けている。
このスリットにより新旧の外壁が違和感なく調和することを期待した。
スリットは外部からの光を遮ることなく室内に取り込み、夜には照明の光を受け街に表情をつくり出す。
既存建物のスケール感を丁寧に残すことにより、時代を経てきた建物の魅力を醸し出しながら、新旧の対比がつくりだす心地よい違和感を持った空間を目指した。